研究概要 |
本研究では原子位置指定トンネル分光法の装置開発に努め(AST法),その有用性を示すとともに,高温超伝導を適用して,励起スペクトルの超伝導・常伝導状態の比較から超伝導ク-パ-対の対称性にアプローチしようとした.キ-ポイントはAST装置の安定化と試料表面の調製,及び測定結果の解釈の問題であった。装置上の問題としては,原型とするSTMが特に低温ではまだ未完成技術であるため,ユニット廻り及び周辺のデザインを試行錯誤により改善して来た。特に温度分布の均一性を得る方向で,ドリフトを防いだ.また,フィードバック回路の増幅度の周波数特性を平坦化することで,多くのSTM装置で生じている課題である発振の防止にかなりの程度成功を収めることができた. 一方,超伝導ギャップの分光曲線は1)高温超伝導体試料の表面第一層が何が露出しているかが場合によって異なり,それにより曲線形状は異なる.2)我々以外に世界で4グループが同様の実験によるデータを出し始めているが,いずれも微妙な実験事実の喰い違いがあり,これが試料の微妙な差によるものか,それとも実験そのものの技術的問題に基づくものであるかは,まだ結論できない.再現性を機器的にはかなり向上させることができたので,Bi22/2系などでは早急に,試料調製条件を変化させた実験を挙行し,どれが物性の真性なデータであるかを確立する必要があり,その準備がほぼ整った.
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