| 研究概要 |
1.CuGeO_3が無機物質としては初めてスピン・パイエルス転移をする事を我々のグループが見つけたのであるが,この物質に関しては今年度主として不純物添加により反強磁性が生じるので,この現象に関する研究を行った.帯磁率の異方性,スピン・フロップ転移の観測等からまず反強磁性相であることを確定し,さらに中性子回折によりスタガード・モーメントを直接観測し,反強磁性相であることを確固たるものにした.さらに,不純物としてZn=(S=0)を入れた時とNi(S=1)を入れた時の違いを明らかにしつつある.この特異な(つまり不純物により誘起された)反強磁性相の特性をBrookhaven National Laboratoryとの共同研究で,中性子回折と中性子非弾性散乱を用いて明らかにしつつある.
2.CuGeO_3の周辺物質の研究
(1)CaCuGe_2O_6
この物質が基底状態としてスピン-重項状態であることを,帯磁率の温度変化と磁化率の磁場依存性から明らかにした.この物質は結晶構造からは,一次元zigzagスピン鎖構造をしていると予想されたにもかかわらず,さらに詳しい解析により,スピン状態は基本的にはdimerで近似され,弱いdimer間相互作用のある系であることが明らかになった.中性子散乱の測定も行い,その結果上に述べたモデルが正しいことが立証された.
(2)Cu_3WO_6
Cu_3WO_6は立方晶構造の物質である.最近接のCuだけを取り出すとCuが6個からなる環をなす(正確には3個づつが同一平面上に乗っている).この物質の帯磁率の温度変化から基底状態がやはりスピン-重項状態であることをみいだした.中性子散乱の実験から上に述べた6個のスピン環で近似的に表されるが,環の間の相互作用も無視できない系であることが示された.
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