2次元d-pモデルの自己エネルギーを求め、エネルギースペクトルを計算した。その際、電子相関Uの2次までの自己エネルギーを求めたが、運動量依存性は正確に取り入れた。このような計算は我々がはじめてである。その結果、自己エネルギーの運動量依存性はかなりあり、一般に無視できないことがわかった。しかし、フェルミ面付近では小さく、藤森グループに依る光電子分光の実験結果を再現できないことがわかった。実験結果はエネルギーによる多体効果の繰り込みが大きいこと、にもかかわらず、フェルミ面付近の準粒子スペクトルの幅は広く、大きな運動量依存性を示しているからである。 この不一致は藤森達によって指摘されているように、クーロン相互作用が長距離になるためかも知れない。つまり、モット転移に近づくと、電荷感受率が減少し、電子間のクーロン相互作用の遮薮ができなくなり、その相互作用の交換項は大きな運動量依存性を持つことが知られているからである。今後、この点を明確にしたい。これまでの理論では、モット転移において電子の有効質量は無限大に近ずくと考えられており、それを修正して、有限の有効質量のまま、モット転移するというシナリオを提示しているのである。その目的で、電荷感受率を計算し、モット転移付近のスクリーニング効果を検討中である。
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