研究概要 |
3d遷移金属を含む酸化物を組み合わせ人工格子・超格子を作製することで、その多様な性質をさらに発展させることを試みた。YBa_2Cu_3O_7と(La,Sr)MnO_3を組み合わせた超伝導体/強磁性体多層膜を作製し、超伝導層が十分厚い領域では低温で強磁性と超伝導が共存することを明らかにした。高温超伝導体の非常に高い上部臨界磁場によるものと考えられる。また磁性体である(La,Sr)MnO_3,(La,Sr)CoO_3や、金属的伝導性を持つ(La,Sr)_2NiO_4をSrTOi_3と積層し、界面におけるミスマッチングを利用して面内応力をかけた人工格子を作製した。どの人工格子にも共通して、積層周期を短くするにつれキャリアー濃度が減少した時と同様な物性変化が見られた。界面ストレスによって実際にキャリアー濃度が減少したのか、それとも別の効果があるのか現在検証中である。このような積層型人工格子の作製に界面平坦性の制御が重要という観点から、薄膜作製技術の向上についても検討した。表面平坦化基板とバッファー層の組み合わせや、レーザーの2重照射が効果を上げている。このような死語多と平行して、遷移金属酸化物の電子状態を明らかにするという観点から、(La,Sr)CuO_4及び(La,Sr)NiO_4の金属-絶縁体転移に伴う状態密度変化を走査トンネル分光法を用いて評価してきた。両系ともリジッドバンドモデルは破綻しており、キャリアードープに伴い価電子帯、伝導帯両方のバンド端から裾を引く形でフェルミエネルギー上に状態が現れた。キャリアードープされた強相関系に共通の特徴ではないかと考えている。
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