研究概要 |
西南日本内帯の美濃帯とロシア極東地域シホテアリン山地のサマルカテレーンはいずれもジュラ紀付加体からなる.これらの地域には,古生代後期の緑色岩・石灰岩,二畳紀〜ジュラ紀前期のチャート,ジュラ紀中期の枠屑岩層などが共通して分布している.一般に,造山帯に広く分布するチャート層には粗粒な砕屑物は含まれず,このことはチャートが遠洋性堆積物であるとする根拠の一つと考えられている.しかし、両地帯の三畳紀層状チャート中には,まれに砕屑岩層が含まれている.これは,チャートのような遠洋性堆積物が集積している堆積盆に,何らかのイベントによる堆積物がもたらされたことを意味している.これら砕屑岩層を岩石学的に検討したところ,砕屑粒子として火山岩(玄武岩?)・チャート・珪質頁岩・放散虫遺骸・斜長石・多結晶石英・ル-テサイト・コノドント遺骸などが含まれることが判明した.また,砕屑岩層の上下の地層から放散虫を取り出しその時代を検討したところ,いずれも三畳紀中期Anisianにその時代が集中することがわかった.さらに,INAAによる予察的な分析によれば,この砕屑岩層自体からはイリジウムなどの白金族元素の濃集は検出されなかった.三畳紀チャートに挟まれる砕屑岩層は,以上のような特徴から,海山・海台などの後背地から乱泥流のような流れよりチャートの堆積盆にもたらされたものと考えられる.日本海が開く前の位置に西南日本を復元すると,砕屑岩層は約500km離れた美濃帯と極東ロシアでみつかっている.このことは,砕屑岩層の後背地で,かなり広域に影響を与えるようなイベントがおき,そのために乱泥流のような流れが発生し,普段は砕屑物が供給されないような遠洋性堆積場まで砕屑物がもたらされた,とするとよく説明できる.
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