研究概要 |
研究代表者の吉田を中心として,観測される磁場から外核内部の流れを推定するために,拡散近似に基づく新しい手法を開発しつつある.これは,従来使われてきた凍結磁場近似に基づく手法に比べて,長い時間スケールを持つ磁場成分に対して有効である.その結果によれば,コア・マントル境界での下部マントルの温度不均質が磁場の成因や変動に重要な役割を果たしていることが明らかになってきた.このことによって,逆に過去の磁場変動からマントルの活動の地球史的な変遷を探る可能性が出てきた. また,吉田らは内核の地球史的変遷と観測されている地震波速度構造との関連を説明するためのモデルを提案した.その結果によると,観測されている地震波速度の異方性は,外核と内核の長期に渡る相互作用の結果として説明される. 研究分担者の佐藤を中心として,吉田らが提案している地球自転速度変動の原因の大気起源説に関する理論的検討がなされた.自転速度変動と地表面気温の変動との間に関係があるらしいことが従来からある程度経験的に知られていた.本研究では,この関係の物理的因果関係を探るために,大気大循環の数値モデルを用いた検討を行なった.その結果によれば,地表面気温の変動では,観測されている地球自転速度の数十年変動の1%程度の変動を引き起こすほどの大気角運動量変動しか起こらないことが明らかになった.このことにより, 自転速度変動の原因の大気起源説に再考が迫られることとなった.
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