研究概要 |
先カンブリア時代のバイオマーカー検出のための予備的実験として,新潟油田地域に分布する新生代第三紀中新世の寺泊層から分離した27のケロジェン試料について熱分解実験を実施した.ケロジェンは蛍光顕微鏡によるマセラルの検討から,陸上植物起源のビトリナイトを多量に含む試料と,海成プランクトン起源の無定形ケロジェンの多い試料とに区分することができる.得られた分解生成物をGCで分析した. 熱分解条件は真空下で70℃/min.で昇温,500℃にて15分間の加熱である.反応管の内壁と液体窒素のコールドトラップとをベンゼン-メタノールで回収し,ケン化したのち中性成分をシリカクロマトグラフ法で脂肪族炭化水素・芳香族炭化水素・アルコール・脂肪酸の4フラクションに分離して抽出した. 本研究では脂肪族炭化水素フラクションについての検討を行った.検出された炭化水素はC_<14>〜C_<31>のアルカンとC_<14>〜C_<29>のアルケンを主成分とし,検出量は3.8〜55mg/g有機炭素である.ビトリナイトを多く含むケロジェンではアルケン/アルカン比が1以下であるのに対し,無定形ケロジェンを多く含むケロジェンではその比が1以上となり,ポリメチレン鎖の結合様式の違いが示されている. GC/MSによるm/z=191と217のフラグメントグラムから,ホパン類とステラン類のピークが同定され,ケロジェンのマセラル組成による化合物の違いが示された.今後GC/MSによるステラン類とホパン類のピークの同定を行い,先カンブリア時代のケロジェンの熱分解生成物の検討へ研究を発展させたい.
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