研究課題/領域番号 |
07238213
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研究種目 |
重点領域研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
熊澤 慶伯 名古屋大学, 理学部, 助手 (60221941)
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研究期間 (年度) |
1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
1995年度: 2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
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キーワード | 生命と地球の共進化 / 先カンブリア代 / 濁川 / 鉄酸化細菌 / 酸化鉄層 / 分子系統学 / DNA / PCR |
研究概要 |
生命と地球の共進化の実態解明に向けて、本年度は「酸化鉄層の形成に関与する生物因子の解明」に焦点を絞り、野外調査及び実験研究を行った。現生の日本で酸化鉄層が形成されつつある代表的フィールドとして長野県濁川源泉地帯に注目した。酸化鉄層の生成環境に関して二度の野外調査を行い、この源泉水が高濃度(50ppm)の二価鉄を含み還元的(Ehは292mV)かつ弱酸性(pH5.8)の状態にあること、源泉付近に大量に生成した酸化鉄の赤茶色堆積物を顕微鏡観察すると高密度にバクテリア様の集塊が見られること等を明らかにした。この堆積物から抽出したDNAを基に、リボソームRNA遺伝子をポリメラーゼ連鎖反応によって増幅して分子系統解析した結果、この赤茶色堆積物中に生息するバクテリアの過半数は鉄酸化細菌Gallionella ferrugineaの近縁種であることが判明した。従って、この堆積物全体としては相当数の鉄酸化細菌が生息し、源泉水から供給される二価鉄の酸化に寄与していることが示唆された。次に採取した源泉水中の二価鉄濃度の減少が堆積物の添加によってどの程度促進されるかを経時的に定量した。その結果、堆積物を添加することによって二価鉄濃度の急激な(初速度で約10倍)減少が見られたが、驚くことに加圧加熱滅菌した堆積物を加えても添加後初期においてはこれに匹敵する効果を生むことが分かった(ただし添加後2時間以降は加圧加熱滅菌しない場合の方が、より強い効果を現した。)このことは、堆積物中の鉄細菌による生物学的な酸化以外に、堆積物中に既に存在する酸化鉄や有機物等による二価鉄の酸化・吸着も二価鉄濃度減少の有力要因であることを示唆している。こうしたことから、大気中の分子状酸素濃度が現在より低く二価鉄の空気酸化が起きにくかった太古代においては、大量の酸化鉄層がバクテリアの直接的・間接的作用によって形成された可能性もあると推論された。
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