研究概要 |
1.研究の目的 ペロフスカイト型酸化物(La_<1/3>□_<2/3>)NbO_3および(La_<1/3>□_<2/3>)TaO_3における大量のAサイト空席□_<2/3>を利用して高リチウムイオン伝導体を化学設計し、これを合成して実現すること。 2.研究の方法 固相反応法により、ペロフスカイト型固溶体系(La_<1/3>□_<2/3>)NbO_3-NaNbO_3、すなわち(La_xNa_<1-3x>□_<2x>)NbO_3(0<x<1/3)の合成を行い、その固溶限界を見極め、さらにその電気伝導性を検討(プランクテスト)した後に、再び固相反応法により、Na^+の一部をLi^+に置換した組成(La_xNa_<1-3x-y>Li_y□_<2x>)NbO_3のプロフスカイト相を合成し、その結晶構造を粉末X線回折法によって同定した。次に目的とする電気伝導法をLCZメーターによる交流インピーダンス法によって求めた。 3.研究の結果 3.1 Li^+を含まないブランク試料のイオン伝導性 ペロフスカイト型(La_xNa_<1-3x>□_<2x>)NbO_3系は、全域(0<x<1/3)で固溶することが認められた。これらの固溶体組成は室温で絶縁性を示し、500K以上で電子伝導性が現れた。しかしイオン伝導性が期待される組成(La_<0.2>Na_<0.4>□_<0.4>)NbO_3では、そのCole-Coleプロットから室温でも検出可能な典型的イオン電導率σ_i=2×10^<-7>Scm^<-1>(292K),5×10^<-5>Scm^<-1>(385K)が見出された。このσ_iは温度と共に増大し、530K以上では可能な測定周波数範囲(最大1.2MHz)からスケールアウトした。考えられるイオン種はH^+,Na^+,O^<2->である。 3.2(La_xNa_<1-3x-y>Li_y□_<2x>)NbO_3系のイオン伝導性 Li^+を含むこの種の固溶体系が固相反応によって合成されたため、結果として電場を用いる強制イオン置換法を必要としなかった。現在得られているイオン伝導性の最高値は、x=0.1,y=0.2の組成(La_<0.2>Na_<0.5>Li_<0.2>□_<0.2>)NbO_3におけるσ_i=1×10^<-4>Scm^<-1>(570K),5×10^<-4>Scm^<-1>(680K)である。 3.3(La_xNa_<1-3x-y>Li_y□_<2x>)TaO_3系のイオン伝導性 Ta_2O_5の固相反応温度は高く、(La_xNa_<1-3x>□_<2x>)TaO_3系の固溶体形成は困難であり、1750Kの焼成でも若干の不純物が残った。しかし表題のLiを含む組成では、ある範囲で単相の試料が得られ、そのイオン伝導性の最高値は、(La_<0.1>Na_<0.35>Li_<0.35>□_<0.2>)TaO_3でσ_i=2×10^<-5>Scm^<-1>(573K)である。
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