研究概要 |
超イオン導電体における共通の特性として低励起モードの存在が指摘され,イオン伝導との相関関係が注目されているが,未だその機構は明らかにされていない.本研究では高温領域におけるイオンダイナミクスを支配する欠陥構造が,極低温領域における格子振動におよぼす影響に着目して,主として熱力学的立場から極低温領域における物性測定を行い,低エネルギー励起の存在を確認するとともに詳細な解析を進めた. 平成7年度は,まず実験装置の製作および整備を進めるとともに,いくつかの超イオン導電体における欠陥構造と低励起モードについて調査し,まずイットリア安定化ジルコニアおよびLiNiO_2について集中的に実験を行った.断熱法による精密熱容量測定を行うとともに,^3He/^4He希釈冷凍機を用いて極低温領域の実験を行った.また音速測定および中性子非弾性散乱実験を行い,格子振動と低励起モードに関する知見を得た. イットリア添加量を変えたイットリア安定化ジルコニアについては,いくつかの粉末,焼結体および単結晶の精密熱容量測定を行い,比較検討した.その結果,粉末試料表面に吸着した窒素および水分子の寄与を明らかにするとともに焼結体および単結晶試料については低励起モードによる過剰熱容量を見い出し,興味深い添加量依存性を明らかにした.また中性子非弾性散乱実験から,低励起モードを直接捉えることに成功し,状態密度分布における鋭いピークとして示すことができた.さらに希釈冷凍による100mKに至る熱容量測定の結果,低エネルギー励起による熱容量はガラスにおけるような単純なトンネル2準位系あるいはソフトポテンシャルモデルでは説明できないことを明らかにした.またLiNiO_2についてはSQUIDによる磁化率測定を行い,磁性の寄与を解析して典型的なスピングラスの挙動を明らかにした.
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