研究概要 |
本研究では、LiMn_2O_4の構造を安定化する目的で、Mnの一部を他の遷移金属で置換した四元系正スピネル酸化物LiM_yMn_<2-y>O_4(M=Cr,Co,Ni; y=1/9,1/6,1/3)を合成し、X線回折による結晶構造の解析とリチウム二次電池特性の評価を行なった。 リチウム二次電池用のスピネル型酸化物は、炭酸リチウム、炭酸マンガンと他の遷移金属の塩を所定の元素比になるように混合し、750℃で3日間加熱を行なって合成した。X線回折の結果、合成したLiM_yMn_<2-y>O_4(M=Cr,Co,Ni; y=1/9,1/6,1/3)は、全て立方晶のスピネル構造の単相であり、置換量が増加するに従って格子定数は徐々に減少した。また、Rietveld解析を行なった結果、Liは全て8aサイト、遷移金属イオンは全て16dサイトを占有し、16dサイト遷移金属イオンと酸化物イオンの結合距離も減少することがわかった。 次に、LiM_yMn_<2-y>O_4の充放電曲線については遷移金属の置換量が増加するに、従い充放電容量は減少することがわかった。これは、3価あるいは2価の遷移金属で置換すことにより、Mnの平均酸化数が増加し、リチウムのデインターカレートする量が減少するためであると考えられる。一方、LiM_<1/6>Mn_<11/6>O_4(M=Cr, Co, Ni)のリチウムのインターカレーション・デインターカレーションに伴う格子体積の変化を概算するとM=Mn: 7.5%,Cr: 5.4%,Co: 6.0%, Ni: 44%となる。従って、他の遷移金属で置換することにより格子定数の変化が抑制される。また、遷移金属の置換量が増加するのに伴い、格子定数の変化量は減少した。 このようにMnを他の遷移金属で置換したスピネル型酸化物の方が良好なサイクル特性を示した。充放電容量とサイクル特性の両者を考慮すると、LiCr_<1/6>Mn_<11/6>O_4あるいはLiCo_<1/6>Mn_<11/6>O_4が、スピネル型酸化物正極では優れた特性を示すと考えられる。
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