研究概要 |
1.研究の目的 イオン電導体ではサイト数が実在のイオン数を上回り、高温で無秩序構造をとるが低温ではより安定な秩序構造に移行する。この構造は高温でのイオン配列が凍結したものであり、その解析からイオン電導のミクロな機構を探ることができる。本研究ではX線回折実験からビスマス酸化物で見られる長周期構造の解析を行い、不純物や酸素欠陥の配列からイオン電導機構を探る。 2.方法 酸化ビスマスと遷移金属酸化物の混晶を溶融法により作成する。これらの結晶の4軸X線解析を行い、長周期構造での不純物原子と酸素欠陥の配列を明らかにする。また交流ブリッジを使用してイオン電導度を測定し構造との相関を調べる。 3.結果 (1)酸化ビスマスと遷移金属酸化物(Nb、V、Y)の混晶の作成を試みた。V,Nbの場合は結晶試料が得られX線写真測定を行い、Nbでは[111]方向に不整合周期構造をとることが判明した。またVの場合は整合構造の良質結晶が得られた。添加物がYの場合は融点が上昇して白金坩堝と反応し破壊したため、低温反応による粉末試料しか得られなかった。 (2)V添加ビスマス酸化物結晶(Bi:V=1:9,1:6,1:5.5の3試料)の4軸回折計による強度測定を行った。重原子法による解析からそれらが不純物成分に依存して多様な長周期構造を持つこと、酸素欠陥が添加金属イオンの周辺に局在しそれがイオン半径と関係することが判明した。更に添加イオン間に働く静電反発力とイオン半径による配位数の条件が添加イオンの周期配列をもたらし、この多彩な構造の成因であることが明かとなった。[1].[2] (3)交流の自動ブリッジを使用してイオン電導度を測定した。これまで粉末試料及び微小単結晶試料の複素電導度の周波数と温度依存性を測定し現在詳しい解析を行っている。
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