研究概要 |
4-t-ブチルシクロヘキセニルフェニルヨードニウムテトラフルオロボラート1のアルコールおよび水性溶媒中における加溶媒分解の反応速度を25-70℃で検討した.溶媒効果は比較的小さく,フェニルヨードニオ基はトリフラートよりも10^6倍良い脱離基であった. 反応生成物を詳しく調べたところ,予想される加溶媒分解物のほかに,オルト体を主とする(4-t-ブチルシクロヘキセニル)ヨードベンゼン5が15から35%の収率で得られた.生成物5は,1のイオン化で生じたシクロヘキセニルカチオンとヨードベンゼンのFriedel-Crafts 型反応でできたものと考えられる.この非常に大きなオルト選択性は,この反応が基質のイオン化で生じたシクロヘキセニルカチオンとヨードベンゼンの接触イオン-分子対の中で起こっていることを示唆している.トリフルオロエタノールのような求核性の弱い溶媒中では,この生成物の比率が増大するにもかかわらず,異性体比はほとんど変化していないことも興味深い.また,p-ヨードトルエン存在下に反応させると,未反応のヨードニウムイオンのなかに少量のアリール交換体が含まれていた.このことは,接触イオン-分子対からの再結合がヨウ素上でも起こっていることを示している. 1の溶液中にC1^-,Br^-のようなハロゲン化物イオンを添加すると,ヨウ素上での超原子価結合に基づくものと考えられる紫外吸収がみられた.この結合によってC-I結合は弱められるものの,C-I開裂反応は減速されることがわかった.
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