研究概要 |
超臨界流体中に生成される温度平衡下にあるクラスターの構造と動力学に関しては、現在においても依然として未知のままであり、平成7年度は古典論より出発し、分子動力学シミュレーションによりこれら構造と動力学について詳細な検討を行った。その中で、これまですでに、超臨界流体について実験的に報告されているもののうち、S(Q)やS(Q,ω)など代表的なものについてはその再現を確認した。その上で、実験からは求めることのできない様々な性質について解析した。 まず、静的な性質に関しては、クラスターの大きさの分布を求め、それが低温のジェットクラスターにおけるものとは関数形からして異なることを示した。また、クラスター中のボンドパターンは枝分かれ構造が多くバルキーであること、またそれに基づいてフラクタルとしての性質を有することを示した。さらには分子の感ずるポテンシャル場のクラスター依存性等を求め、臨界密度付近においてゆらぎが最も大きくなることを明らかにした。 動的性質に関しては、クラスターの生成消滅のダイナミックスとボンドパターンの変化、そして一粒子エネルギーの時間変化などについて明らかにした。特に、S(Q,ω)やエネルギーの時間相関関数に見られた臨界減速の現象に関しては、大きなクラスター中ほど運動の時定数は長く、この大きなクラスターが臨界密度に近いほど多く生成されるために生ずるものである、というこれまでの定性的な説明を、分子論的にまた定量的に示した。
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