研究概要 |
本重点研究では高分子化合物を用いての高秩序、高配向性の分子組織体の創成を目指して、高分子LB膜の構築とその構造解析を行い、組織体の性質を制御する因子について、分子レベルで検討して行くことが目的である。以前に長鎖アルキルアクリルアミド系高分子が優れた単分子膜形成能を有していることを見い出している。このLB膜の秩序構造について赤外スペクトルより詳細に検討した。また、生体膜と同様の構造を有する二本鎖構造の重合性ジアルキルアクリルアミド類についても新たに検討を加え、相転移現象を制御する高分子組織体の構築について検討した。 まず、長鎖アルキルアクリルアミドのLB膜の分子配向について透過法、高感度反射法FT-IRおよび偏向FT-IR用いて、LB膜面内、面外配向について検討を行った。偏向子を挿入した場合の透過スペクトルにではは累積方向に対して垂直方向と並行方向で、大きな二色性を示し。分子が累積方向に対して配向した秩序構造が提案された。しかもほとんどの分子が累積方向に対して垂直方向に並んでいるという非常に特殊な配向を持つという結果が得られた。X-線回析の結果からは約29度のチルト角が見積もられた。分子がほぼ同方向に配列したこの特徴的な配向は、ODA親水部のアミド基による水素結合によると考えられる。 続いて、新規に生体膜と類似の膜構造や相転移挙動が期待されるジアルキル基を有する重合性両親媒性分子の単分子膜、LB膜について検討を行った。種々の鎖長を有するN,N′-ジアルキルアクリルアミドモノマーについて検討した。水面上単分子膜については表面圧-面積曲線の解析を中心に行った。また、LB膜中での相転移現象、添加物効果、転移現象に伴う透過性の制御などについても成果を得ている。種々のN,N′-ジアルキルアクリルアミドを合成し、その水面上単分子膜及びLB膜について検討した。N,N′-ジヘキサデシルアクリルアミド(dHDA)の種々の温度でのπ-A曲線の検討では、10℃以下では凝縮相のみを与えた。10℃から25℃では膨張膜から凝縮膜への表面圧がプラトーな転移領域を持ち、固体凝縮相が消失した凝縮膜を形成した。29℃以上では凝縮相は消失し、膨張膜を形成した。極限占有面積をプロットしたところ、29℃付近で0.5nm2から0.78nm2に大きく増加した。DSC測定から30℃付近にゲル-液晶相転移が観察されたことから、占有面積の変化はこの相転移によるものと考えられる。この単分子膜を累積して得られるLB膜の相転移についても検討した。
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