研究概要 |
1.LB膜を用いた強磁性トンネル接合の生成 poly-N-dedecylacrylamide(PDDA)有機超薄絶縁膜を生成した.これを用いてCo/PDDA/80Ni-Feトンネル接合を作製した.Coと80Ni-Feの保磁力の差により磁化の反平行状態が実現され,この時抵抗値が上昇する,いわゆる磁気トンネル効果を観測した.有機超薄膜を用いて磁気トンネル効果を観測したのは初めてである.また有機分子としてステアリン酸Ba塩,メロシアニン色素についても検討した.色素を用いた接合の生成は機能性有機-無機接合素子への応用として注目される.有機分子上に蒸着した金属電極の保磁力はその蒸着条件および有機分子の表面状態に大きく依存した. 2.非弾性トンネルスペクトロスコピー(IETS)装置の製作 有機分子を用いたトンネル接合の金属-有機分子界面状態の解明のためにIETSを製作した.回路はブリッジを使用した変調法によるもので,模擬試料およびAl/Al_2O_3/Co接合において,回路の動作を確認した. 3.フェロセン誘導体薄膜の磁気特性 絶縁層として用いたPDDAにフェロセニルメチルアクリレート(FcMA)を共重合させその磁気特性を測定した.この共重合高分子はpowder状態で常磁性を示した.これをLB法により分子配向化するとモルあたりの磁化はpowderの20〜30倍に上昇した.磁化曲線の形状は強磁性的である.さらに,この膜は累積方向に依存する磁気異方性も観測された.FcMA1分子あたりの磁気モーメントは約0.8μ_B(55kOe,4.5K)で,FcMAの重合比率を上げるとむしろ減少した.磁化曲線は室温以上においても依然として強磁性的で,550K以上の焼鈍で融解に伴いpowder値まで減少した.
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