研究概要 |
表面科学的手法を用い,単結晶金属モデル触媒表面におけるメタンや炭酸ガスの活性化機構を明らかにすることを目的として,Cu触媒を用いたCO_2の水素化によるメタノール合成反応を調べた。我々は,触媒表面におけるCu^+とCu^0の比が活性を支配する因子であること,さらにCu触媒表面上にZnO種が被覆する部位に活性点が形成されることを報告してきたが,そのモデルを確かなものとするために光電子分光装置(XPS,AES)に高圧反応装置を取り付けた装置を用い,Znを蒸着させたCu(111)上でCO_2の水素化反応によるメタノール合成反応を行った。その結果、Znの活性促進効果が明らかとなり,Zn/Cu(111)の活性は,最適Zn被覆率で,清浄なCu(111)の約13倍となった。Zn/Cu(111)上でのメタノール合成の活性化エネルギーは,粉末Cu/ZnO触媒のものと同程度の値であり,さらに同じ反応条件(523K,18atm)において,TOFの絶対値も同程度であったことから,Znを蒸着したCu(111)は粉体のCu/ZnO触媒のモデルとして妥当であることが示された。また,反応後のXPS分析により,Cu(111)表面に蒸着したZnが,反応中に生成したフォーメートに結合していることが示された。フォーメートはメタノール合成反応の重要な中間体と考えられており,文献によれば,フォーメートの水素化が反応の律速であると報告されている。本結果はこれと矛盾しない。すなわち,Znの効果は,反応中間体であるフォーメートを安定化にあるものと考えられる。また、STMにより活性点の局所構造を調べた。Cu(111)にZnを蒸着させると,Zn原子がCu原子と置換してsurface alloyが形成することが示唆された。触媒活性点は,このようなCu-Zn surface alloyである可能性が高い。
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