研究概要 |
Cs_<2.5>Ni_<0.08>H_<1.34>PVMo_<11>O_<40>を用いてイソブタンの酸化反応を行うと,生成物は主にメタクリル酸(MAA),メタクロレイン(MAL),酢酸,CO,CO_2であり,イソブタンからメタクリル酸への直接酸化が進行することがわかった.MAA収率は340℃で最大であり,9%となった.この値は,これまでに特許などで報告されている最大値6.2%よりも高く,本触媒系がイソブタン酸化に有効であることがわかった.また,以下に示すようにCs,V,Niの置換がヘテロポリ化合物の活性向上に有効であった. Cs置換効果 Cs_XNi_<0.08>H_<3.84-X>PVMo_<11>O_<40>(x=0-3)の触媒活性は,Cs置換量によって変化した.x=0,1の活性が低いため,反応は340℃で行った.x=0,1,2,2.5,3で転化率はそれぞれ6,4,12,31,8であり,x=2.5で最大となった.MAA収率もそれぞれ1.3,1.8,5.6,9.0,0.8%であり,x=2.5で最大となった. Ni置換効果 Cs_<2.5>H_<0.5>PMo_<12>O_<40>に種々の金属イオンを添加すると,Ni^<2+>,Fe^<3+>,Mn^<2+>の添加でMAAとMALの合計収率が向上し,Ni^<2+>で最大となった.Ni量をさらに増加させると転化率,MAAとMALの合計収率ともに著しく減少した.この低下はプロトン量の減少によるのかもしれない. V置換効果 Cs_<2.5>Ni_<0.08>H_<x+0.34>PV_xMo_<12-x>O_<40>触媒上でのイソブタン酸化反応を320℃で行うと,x=0-4で転化率はそれぞれ10,15,13,12,10%となり,x=1付近で最大収率が得られた.x=0-4で,MAAへの選択率はそれぞれ27,36,28,10,4%であり,x=1で最大となった.したがって,MAA収率もx=1で最大となった. 活性支配因子 イソブタン酸化反応活性は触媒の還元反応速度とともに増加した.同様に,イソブタン酸化反応活性とアセトアルデヒドの触媒的酸化反応速度との間にも,良い相関が得られた.COによる触媒の還元反応やアセトアルデヒドの触媒的酸化反応は表面型の反応で,触媒の酸化力が活性支配因子である.したがって,イソブタン酸化反応は表面型の反応であり,反応が触媒の酸化力によって支配されていると考えられる.
|