研究概要 |
近年,極限的な反応条件で高活性・高選択性を発揮する触媒の開発が注目されている.このような触媒の開発には,固体表面と吸着質の吸着構造や相互作用の理解が必要である.分子軌道法を用いて種々の分子の吸着構造や固体との相互作用が解明されれば、触媒設計指針の確立に有益な知見が得られるとの着想により本研究を実施した。本研究はシリカゲルおよびゼオライト表面と種々の吸着質の非経験的分子軌道計算を実行し、吸着構造と相互作用に分子論的検討を加えるとともに、触媒設計の指針を得ることを目的とする。本年度は,シリカゲル表面におけるアンモニア,水,二酸化硫黄,メタノール,エタノール,2-プロパノール,2-ブタノールの吸着を取り上げ,非経験的分子軌道を用いて吸着構造を解析した. シリカゲルの吸着サイトとしてシラノール基とシロキサン基を考え,吸着サイト,吸着質,吸着サイト-吸着質の構造はHartree‐Fock(HF)レベルの計算で最適構造を求めた.相互作用エネルギーはHFレベルと電子相関を考慮したMP2レベルの計算により決定した.シラノール基においては安定な吸着構造が得られずに,シラノール基における相互作用エネルギーは微分吸着熱の実験値と大略一致した.アンモニア吸着では1個のシラノール基から構成される吸着サイトが,水,二酸化硫黄,アルコール類に対しては2対のシラノール基から構成される吸着サイトがより安定な吸着構造を与え,吸着に望ましいことが分かった.
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