研究概要 |
本研究は人工生命的観点に基づく進化発展的エージェント群の機能分化を伴う自律的知能構成を実現させるための理論的研究を行う. 蜜蜂の巣作りといった集団行動など,昆虫レベルにおいてさえも組織的活動として興味深いものは極めて多い.こうした集団行動において,個々の虫が常に他者との協調関係を考慮しつつ,計画だったタスクの処理を行っているとは考えにくい.つまり,組織的かつ動的なタスク処理において,常に他者の状況を鑑み,協調関係を維持しようとするためには多大なる推論とコミュニケーションが必要となることは容易に推察がつく.しかしこれらの昆虫レベルでそれほどの知的処理が遂行されているとは考えにくい.むしろ,個々のレベルでは機会主義的な感覚・反応系に基づく行動戦略によって基本的な組織的行動が生来的に発現され,さらにタスク処理上の効率化等を図るために,特異な状況に対する行動戦略の推移や簡単なコミュニケーション様式に基づく協調メカニズムが組まれていると考えることができる.本研究は,このような立場からなる組織化の創発に興味を持つ.すなわち,個々のエージェントが動的環境の中で,他との協調関係を明示的に意識することなく,機会主義的な行動戦略によって基本的な組織的行動様式を実現させることを第一の目標とした.このような組織化レベルを“弱い組織化"と呼ぶものとし,基本的な行動ネットワークに基づく行動選択機構の構築を行なった.すなわち,多数のモチベーションを持つ行動選択ネットワークに,行動発現の「継続性(耐性)」と「中断性(諦め)」のバランスを自律的に謀るダイナミックス機構の導入を図り,この有効性をマルチエージェント系モンキーバナナ問題に適用し,その有効性を確認している.
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