研究概要 |
本研究ではまず,柔らかい物体を操作するときの人間の機能的運動を計測・分析するとともに,分析の結果得られた技能的運動をロボットマニピュレータで実現することを試みた.特に,ホ-スの挿入作業における人間の動作を計測し,力覚と運動の関係を分析した.その結果,人間が作業を行なう時,感覚により作業状態を認識し,それぞれの状態に応じた動作を行なうことにより,巧みに作業を進めていることがわかった.ホ-スの挿入作業においては,1)接近状態,接触状態,挿入状態の3つの状態において,異なった動作を行なっている.2)力覚の変化によりそれぞれの状態の遷移を認識している.ということがわかった.さらに.人間の動作軌道をマニピュレータに移植し,状態遷移の認識則の適用に対する可能性を考察した.その結果,人間による作業と同様に,力覚の変化を通して,接触状態から挿入状態への遷移を検知できることが判明し,技能的運動をマニピュレータで実現するための基礎が得られた. 次に,柔らかい物体のマニピュレーション過程の力学的解析を行なった.特に,変形しやすい物体を安定に把持するための条件について考察した.物体のポテンシャルエネルギーと,物体に加えられる幾何学的および力学的制約を定式化し,安定把握の条件を解析した結果,安定な把持を維持できる外力の最大値を導出することが可能であることを示した.さらに,その最大許容外力が,初期状態における物体の変形形状に依存することが示された.
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