研究概要 |
延伸したフッ化ビニリデン/三フッ化エチレン共重合体P(VDF/TrFE)膜をその表面を自由表面に保って常誘電相(六方晶相)で結晶化すると,ラメラ結晶のない,完全伸長鎖結晶からなる,透明で光学的に均一な膜が得られる.また,P(VDF/TrFE)とPMMAのブレンドも延伸膜を同様に結晶化することによって,結晶性の高い,光学的に均一な膜が得られる.本研究ではでは,われわれが発見したこれらの膜の電氣光学効果および非線形光学効果を利用する目的で構造と光学的性質を調べ,次の結果を得た. 1)P(VDF-TrFE)とPMMAとのブレンド膜 まず,ブレンド結晶化膜中に各構成成分がどのように存在するのかを,X線回折,小角X線散乱,DSCなどで調べた.P(VDF/TrFE)とPMMAは重量比55:45まで互いに固溶体を作り膜中で配向している.P(VDF/TrFE)成分濃度xが55%以上のとき(x-55)%のP(VDF/TrFE)が高度に配向した伸長鎖結晶をつくる.その結晶の直径は0.2μm程度である.光学的には2つの成分の屈折率が同じ程度であるので,この膜は光学的に均一である.延伸方向とこれに垂直方向の複屈折率 △n はPMMA濃度によって異なり0.025-0.055である.PMMAに固溶する色素分子を導入した結果,色素による吸収は2色性を示し,色素分子は膜中でよく配向していることが分かった.この膜は強誘電性を示すことが分かった. 2)P(VDF-TrFE)単結晶状膜 膜中の結晶c軸は高度に配向し(配向係数0.998),[110]軸の膜法線方向の配向係数も0.95であることから,この膜が巨視的には単結晶的であり,大きい複屈折率(△n=0.055)をもつことが分かった.膜は大きい厚み圧電効果(結合係数k33=0.3)とずり圧電効果(k24=0.27)をもつことから,膜面に垂直,または垂直な電場に対して大きい電氣光学効果が期待できることが分かった.今後,これらの電気光学追求する.
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