研究概要 |
1.縮合多環芳香族炭化水素のうち,アセンおよび枝分かれのないフェン類に対するPPP分子軌道法計算の新しいパラメーターNew-γの値をabsolute hardness ηを用いて見積もると,電子スペクトル計算の高精度化が達成できることが明らかとなった.この際,縮合多環系の縮合様式を,aromatic sextet rexonance system(ASRS)とaromatic sextet alternant system(ASAS)という新しい概念で区別して取り扱うことが有効である。 2.枝分かれを含む縮合多環系はの適用:この系では,分子中の最大アセン部分に着目する方法が有効で,単にこの部分構造における縮環数を数えるだけで,パラメーターNew-γの値の見積もりが可能であることを明らかにした.そして,この領域を,spectroactive ASRSと呼ぶことを提案した. 3.新概念spectroactive ASRSをペリ縮合系に拡張して適用するための方法論を,原子価結合法(VB法)の考え方を取り入れて考案た.すなわち,分子の電子状態を主として寄与する部分構造をspectroactive main structure,残りの構造をspectrochemical perturbing structureと定義し,VB法の考え方によりそれぞれの領域を定めた. 4.鎖状共役系への適応.中性ポリエン,メロシアニン,ポリエニル陽イオン,シアニン,オキソノール類に対するNew-γの値の見積もり方について検討した. ベンジリデンアニリン類(X-C_6H_4(p)-N=C-C_6H_4(p)-Y)の分子構造をab initio法で最適化し,分子の非平面性と非線形性の相関について検討した. 結晶中での分子配列制御に有用な新しい水素結合系を開発するため,二置換アミドによる1次元的な水素結合系の構築,アンモニウムスルホネート塩を用いた2次元シート構造の構築を目指し,結晶作成と構造解析を行った.前者では,N-(9'-アントリル)-9-アンドラアミトについて積層カラム構造を得た.また,後者では,構成単位を変化させた5種の塩の結晶構造を確認したが,統一された水素結合様式は見られなかった.そこで,多点的に2次元,3次元に構造を規制するような系の開発を検討している.
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