研究概要 |
1.エンド体の二環性アミノアルコールを不斉源に用いて,チオフェン環とベンゼン環を持つ1,2-ジアリールエチレンを良好な収率で合成することができた。高圧水銀灯を用いて,このオレフィンを光環化させたところ,4個のチオフェン環と3個のベンゼン環をもつ[7]ヘテロヘリセンのジアステレオマ-を77%の収率で得ることができた。ジアステレオマ-はシリカゲルクロマトグラフィーで容易に分離できるため,それぞれ分離精製したジアステレオマ-から不斉源の除去と官能基変換を行ない,両端に水酸基を持つ(P)-体,(M)-体の[7]チアヘテロヘリセンを96%の光学純度で合成することに世界で初めて成功した。 2.ラセミ体の(ビスヒドロシキメチル)[7]チアヘテロヘリセンを合成し,リパーゼ(シュードモナスセパシア)を用いてビニルアセテートのトランスエステル化反応を行なったところ,(P)-体の(ビスヒドロシキメチル)[7]チアヘテロヘリセンが光学純度98%で得られることを見い出した。また,リパーゼとしてカンジダアンタークチカを用いると,(M)-体のヘリセンが92%の光学純度で得られた。以上のように,酵素を使い分けることによりヘリセンジオールの両方のエナンチオマーを得ることに世界で初めて成功した。 この手法により,二つの官能基を有する光学活性ヘリセンを高純度で,しかも多量にすることが可能となり,光学活性ヘリセンを用いた機能化学や不斉反応の研究が大いに期待される。
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