研究概要 |
本年度は、有機分子薄膜を積層して作製した有機超格子構造、特に色素分子のAlq_3(8-hydroxquinoline aluminum)、TPD(N,N′-dipheny1-N,N′-(3-methylphenyl)-1,1′-biphenyl-4,4′-diamine)を用いた超格子構造にみられる非線形光現象を中心に研究を行った。 有機超格子構造の光非線形性を検討するために、Alq_3/TPD超格子構造の非線形光吸収即ち、入射光強度による光吸収係数の変化を調べた。励起光としてQスイッチNd:YAGレーザ光(波長1.06μm)の3倍高調波355nm(パルス幅30ns)を用いた。測定に用いた光波長はTPDのHOMO-LUMO間を励起し、Alq_3にエネルギー移動を生じる波長である。 測定に用いたAlq_3/TPD超格子構造はAlq_3/TPD=10nm/10nm、6周期とし入射光強度に対する出射光強度の関係を求めた。励起光強度が弱い範囲では、TPDのHOMO-LUMO間の遷移による大きな吸収係数を持っているが励起光強度が強くなるに従い吸収係数が小さくなる。さらに、入射光強度が数千W/cm^2以上の領域では透過は極めて大きくなり透明になることが明かになった。 Alq_3/TPD超格子構造においてはTPDのHOMO-LUMO間の遷移が主として生じており、Alq_3/TPD超格子構造のPLの結果から判断するとAlq_3にエネルギー移動を起こす遷移過程となっていると考えられる。有機超格子構造における光非線形性のメカニズム、バンド間の遷移と非線形光吸収、過飽和光吸収との関係については、今後の検討課題である。
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