研究概要 |
一次宇宙線エネルギーについて,10^<20>eV附近に上限ありと予想されていたが,最近はこの上限エネルギーを越えた事例が観測されている.よって世界的により大面積(5,000Km^2)の観測装置の建設のAuger Projectがスタートした.これに関連してシカゴ大学のCroninはHillasによるMOCCAシミュレーションを基に一次宇宙線の化学組成を反映する空気シャワー中のμ中間子成分の分離の可能性を指摘するSandwich Detectorを提唱している.このシミュレーションの検証は大空気シャワー観測装置をもつAGASAでしかできないので,このDetectorを明野観測所に建設し,この検証を速やかに行ない有効性を検討する. この装置は1994年秋より準備を始め,1995年5月には鉛板1cm(1.8radiation length)を挟んだ全面積12m^2のシンチレーター検出器(上層,下層それぞれ1m^2検出器12台)を完成し,調整後個々の検出器の粒子数の測定を開始した.1995年8月にデジタルメモリーユニット購入後,直ちに上層と下層の2チャネルの到着時間分布の同時測定が開始された.約100Km^2のAGASA装置のトリガーで得られた情報との対応で10^<18>eV以上の例について電子・光子・μ中間子成分の1Km〜2.5Km遠方での重要な情報がえられた.半年程度の測定で統計量は乏しいが,電子・光子・μ中間子成分についての空気シャワーの横分布はMOCCAシミュレーションの結果とファクター2で一致している,また,検出器1m^2の単位は10^<18.5>eV以下の空気シャワーの中心より1Km以遠での粒子成分の区別によい.現在はより分離の確実性を増すため到着時間分布のデータの解析をしている.今後は10^<19>eV以上の例を増すため連続観測を行ない,シミュレーションの検証を続け,より最良の検出器の条件を求め,一次宇宙線の化学組成の解明に向う.これまでの研究経過,成果は機会あるごとに発表してきたが,引続きAuger Projectの進行に沿って速報的意味も大きいので発表の機会を探す.
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