研究概要 |
本研究の目的は,空間的な解像度を変化させることができる順応型ビジョンチップを制作することである.本年度は当初の計画に従って以下の結果を得た. 1.脊椎動物網膜の視細胞,水平細胞,双極細胞が成す神経回路網を,並列抵抗回路網モデルにより記述した.このモデルには,実際の神経回路網に存在する空間解像度の変化の機構を組み入れてある.この機構は,外界の明るさに応じて順応的に働くものであると考えている. 2.抵抗回路網モデルの物理的エネルギーを導き,これを標準正則化問題として定式化した場合の初期視覚における評価関数と対応させた.その結果,上記神経回路網が,ラプラシアン・ガウシアンフィルターを近似実現する回路であることが分かった.またこの定式化により,回路のパラメータをどのように変化させれば,空間解像度の調節を適切に実行できるかが分かった. 3.モデルにおいて,本研究目的達成のカギと考えられる空間解像度の調節部をCMOSトランジスタで構成するアーキテクチャを考案し,モデルの入出力特性をシミュレーションソフト解析した. 4.上記のCMOSトランジスタのアーキテクチャに基づき,市販のディスクリート素子を使って,電子回路による一次元のビジョンチップモデルを制作した. 5.制作した電子回路から,回路パラメータ変更の手続き,素子のばらつきの影響に関するデータが得られた.
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