研究概要 |
SRP RNAは、正真細菌からヒトにいたるまで広く生物界に保存されているRNAである。真核生物のSRP RNAは、シグナル認識粒子(SRP)の構成成分であり、大きさは、約300残基で、Alu反復配列に相同な部分とSは100残基である。枯草菌のscRNAでは、ドメインI,II,IVに相当する約271残基からなる。真正細菌のSRP RNAの構造・機能相関に関するこれまでの実験から以下の知見が得られた。 (1)大腸菌4.5S RNA結合蛋白質の検索と構造解析 4.5S RNA結合蛋白質をゲルシフト法を用いて検索したところ、2種類の大きさの異なるバンドが得られた(complex1,2)。Ffh蛋白質が4.5S RNA結合能を持つことが明らかとなっているが、精製したFth蛋白質を用いてゲルシフト実験を行ったところ、complex2と同じ移動度を示した。DEAE-SephadexA-50,Sephadex G-100により、complex1形成に関わる蛋白質を精製したところ、78kDaの蛋白質(P78)が検出された。N末端のアミノ酸配列を解析し、ホモロジーサーチを行ったところ、P78は蛋白質合成伸長因子EF-Gであった。さらに、EF-Gの4.5S RNA結合活性はGDPの添加により約3倍増加した。以上の結果から、EF-Gが新規の4.5S RNA結合蛋白質として同定された。 (2)枯草菌scRNAの生体内での局在とscRNPの精製. 枯草菌のscRNAはFfh蛋白質(50kDa)とscRNPを形成している。ショ糖密度勾配遠心法によりscRNPは8.2Sの沈降係数を示した。scRNAとFfh蛋白質をマーカーにして、ω-アミノペンチル、DEAE-セファロースCL-6B,Ffh抗体カラムを用いてscRNPを精製したところ、scRNPには、Ffh蛋白質に加えて、24kDaの蛋白質が含まれていた。一方、精製Ffhを用いて、EDACによる化学架橋実験を行ったところ、Ffhは分泌蛋白質のシグナル配列と特異的に結合した。以上のことから、枯草菌のscRNPは真核生物のSRP様粒子の働きを持つことが示唆された
|