研究概要 |
当報告者は昨年度において、5′末端にアンチコドン、3′末端に識別位塩基とCCAシーケンスを持つヘアピン型RNA(原始tRNA)が、バリン-アスパラギン酸というジペプチド(原始酵素)存在下において、対応するアミノアシルアデニレートと反応してアミノ酸をチャージすることを示した。次のタンパク質合成系おける重要なステップ、ペプチド転移反応においても、鋳型モデルとしてのホモポリヌクレオシド存在下に、アミノアシルtRNAの間にアラニン・ヒスチジンを触媒としてペプチド転移が起こることが確かめられた。このことはジペプチドが一般に原始酵素として働くことを示唆する。そこで、現在の酵素で活性中心にあり重要な役割を果たすことが判っているアミノ酸をピックアップして原始酵素と思われるジペプチドを用い、様々な生化学反応をチェックした。その結果、上記のLigase,transferase活性にひきつづき、isomerase,lyase,oxidoreductase,hydrolase活性を各々数例に互り活性のあることを示すことができた。これらはいわゆるタンパク質の六大分類をすべて含んでおり、これで原始tRNAのみならず原始酵素迄を含む、いわばオリゴマー・ワールドとでも言うべき系を見出せたことになる。原始地球において現在の生命系が用いているポリマーの自発的形成は全く不可能と思われるので、こういったオリゴマー系こそが、化学から生物学へのジャンプをひき起こしたことが予想される。上記原始tRNAが原始遺伝子として働き、原始酵素を作る系についても検討中である。
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