| 研究概要 |
一次視覚野(V1)において、局所に生じた神経興奮が空間的・時間的にどの程度の広がりをもって伝播し、それに続く入力に対する反応にどのような効果をもたらすのかということを検討する目的で、麻酔・非動化したネコの17野で電位感受性色素を用いたin vivo光学計測実験をおこなった。計測にはSD1001(FUJIX)を用い、神経活動は590nm以上の反射蛍光強度の変化として記録した。
1)刺激間隔(ISI)10,50,100,200,300,400msで2発の連続した電気刺激を行った。これによる興奮性活動は観察面全体に速やかに伝播し、特に50ms以上のISIでは2発目の刺激に対する反応において強度・持続時間の著明な増大が見られた。
2)2発目の反応に見られる反応強度の増大はISI100-200msで最大となり、1発目の反応に対して約200%の信号強度が得られた。これは刺激点から任意に選んだ0.1-2mmの範囲内では共通して観察された。
3)2発目の反応に見られる反応持続時間の増大はISI200msでピークとなり、1発目の反応が持続時間が6-10msであったのに対して、2発目は約40msであり、500%程度の増大となった。これは刺激点から任意に選んだ0.1-2mmの範囲内で共通して観察された。
本実験はは電気生理学的にpaired-stimulus facilitationとして報告されている現象を光学計測により皮質表面で2次元的に観察したものであるが、視覚野の局所に生じた神経興奮が、適当な時間間隔をおいた後に生じる同じ場所の興奮の伝播を強度・持続時間ともに増強させるという性質が明らかになった。このことは、心理実験の結果から示唆されている「先行する感覚刺激の存在により、同じ場所に呈示される後続刺激の知覚が促進される」というstimulusinduced attentionの基礎となるメカニズムが視覚皮質の神経回路の動作特性そのものに求められることを示唆する。
本研究の成果については平成7年の第4回IBRO世界大会において報告した。
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