研究概要 |
大脳の感覚野と運動野に観察される機能地図は大脳皮質に特徴的な構造である.われわれは既に,最近の生理学的知見に基づいた,興奮波によるマップ形成モデルの作成に成功している.このモデルは時空間パタンの同調という観点に立っており,発火の時空間的性質に本質的に依存している点で従来のモデルと異なっている.本年度は興奮波の幅を変化させ,さらに安定なマップ形成のアルゴリズムを開発した.これによれば,全くランダムな初期値からでも確実にマップを作り出すことができる.われわれはさらに進んで,実際のLGNのようにレティノトピーと眼優位層を併せ持つ3次元構造を形成するモデルの構築にも成功した. 従来のコホネン型モデルを使った大脳皮質視覚第一次野のモデルの研究も進め,新しいハイパー・コラムの標準的描像として,方向選択性(選択方向+選択感度)と眼優位性の作る円柱状の3次元情報空間のなかに浮かぶ繭状の構造を提唱した.これにより,視覚第一次野のマップにみられる著しい二つの特徴 1)特異点(ピン・ホイール)は,眼優位コラムの中心に並ぶ 2)等方位線と眼優位コラムの境界は直交する傾向がある が形成される理由と意味が自然に理解される. 入力情報によるマップの形成が始まる以前に,ある程度の構造(プレパタン)が出来上がっていて,それを下敷にして,最終的なマップの微調整が行われるというのが現在の有力な考え方であるが,下敷となるラフな構造は,最終的なマップ形成にどういう形で影響を及ぼしているのかを,シミュレーションによって検討した.
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