研究概要 |
1)大腸菌を宿主として複製するミニFの複製開始頻度は厳密に調節されている。この調節にはミニFの複製開始蛋白質(RepE)が重要な働きをしている。RepEは複製開始因子として、また自己転写抑制因子としての機能を持つ。この特徴は多くの複製開始因子に共通する。我々はこれまでの解析から、RepEのイニシエーター/リプレッサーの機能転換は単量体、二量体の構造変換として理解出来ることを明かにした。この変換に分子シャペロンが関与しているという示唆的データーを得ていたが,このことを精製RepEを用いた実験系を作り、確証する試みをした。マイクロコンによる分子篩法を用いると、単量体(分子量30kDa)は濾液に80〜100%回収されるが、正常RepE(二量体、分子量60kDa)は濾液に3〜7%しか回収されない。しかし4M Guanidine塩酸であらかじめ正常RepEを処理したり、分子シャペロン(DnaK, DnaJ, GrpE)とATPで処理すると濾液に前者は78%,後者は42%回収された。正常RepEが濾液に回収されるにはDnaK, DnaJ, GrpEとATPが必要であること、またこの濾液のゲル濾過カラム溶出パターンから単量体RepEであることを明らかにした。この結果はRepE二量体が分子シャペロン(DnaK, DnaJ, GrpE)とATPによってRepE単量体に変換されることを示している。in vivoにおいても、人工的に細胞内の分子シャペロンの量を増すとRepEのイニシエーター活性が増加することがわかった。このことはRepEのイニシエーター機能の活性化に分子シャペロンが働いていることを示している。 2) RepEと分子シャペロンとの相互作用領域、DNA結合ドメイン、二量体形成ドメインを明かにし、分子シャペロンによるRepEの高次構造変化と活性化の機構を分子レベルで明かにするためにはRepEの機能ドメインの解析データーが必須である。RepEのDNA結合ドメインを遺伝学的手法により決めるためにrepE遺伝子の全領域に均一に変異を誘導し、複製開始領域にもオペレーターにも結合出来なくなった変異体を系統的に分離、解析した結果、C末端領域がDNA結合に関与していることを明かにした。
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