研究概要 |
シロイヌナズナのミトコンドリアCpn10(AT1),プラスチドCpn10(AT2)のcDNAクローニングを行い、それを用いてN末端にヒスチジンタグを付けたAT1タンパク質及び,AT2タンパク質(トランジットペプチド部分を除いたもの)を大腸菌内で発現させ,ゲルろ過カラムクロマトグラフィー及びクロスリンク法によってオリゴマー構造を解析した.その結果AT1は7量体,AT2は4量体との結論を得た.7量体AT1はこれまでの結果に合致するが,4量体AT2はCpn60と結合し得るサイトを8個持つと考えられる.4量体AT2がCpn60と実際に相互作用しているかどうかは今後の研究に残されている. アンチセンスAT1cDNAを強制発現させたシロイヌナズナの形質転換体16系統について,導入したアンチセンスmRNA及び内在性のセンスmRNAの蓄積量を調べた.いずれの個体もアンチセンスmRNAの蓄積は見られたがそれに対応したセンスmRNAの著しい減少は見られなかった.それと同様にタンパク質レベルでも著しく変化したものは見られなかった形態,成長速度などの変化は通常の成育条件においては見られておらず,高温等の条件下でより詳細に調べる必要があると考えられる.また,センスAT1cDNA及びセンスAT2cDNAを過剰発現させた形質転換体はタバコを用いて作製した.どちらのコンストラクトでもいくつかの形質転換体においては,導入したタンパク質が多量に発現していることがイムノブロット解析により確かめられた.現在,高温耐性の影響を調べるためホモの系統を作製している.現在知られているシャペロニンの機能から,シャペロニンを導入した形質転換体では熱処理後の回復がより速やかに起こることにより高温耐性を獲得できるのではないかと考え,その可能性を追及している.
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