分裂酵母mes1変異株は減数第二分裂に特異的な欠損を示すが、mes1遺伝子産物は他のタンパク質と相同性をもたず、その生化学的な機能は不明である。mes1と機能的に相同な高等動物遺伝子を同定するために、mes1変異を相補する遺伝子をマウス精巣およびアフリカツメガエル卵母細胞由来のcDNAライブラリーより単離した。マウス精巣cDNAライブラリーからはαチューブリン、アクチンおよびダイニンをコードする遺伝子と、癌原遺伝子のc-cblが得られた。アフリカツメガエル卵母細胞cDNAライブラリーからはαおよびβチューブリンとアクチンをコードする遺伝子と、出芽酵母CDC20に相同な遺伝子が得られた。CDC20遺伝子はWDリピートをもつタンパク質をコードし、細胞周期のG2/Mを制御していると考えられている。 一方、分裂酵母におけるmes1の生理機能を解析するために、mes1をマルチコピーで抑圧する遺伝子とサプレッサー変異株の単離を行なった。マルチコピーサプレッサーとして出芽酵母CDC20に相同な遺伝子が得られた。抗体を用いた実験と出芽酵母のtwo hybrid systemを用いた実験より、この遺伝子の産物とmes1遺伝子産物とが直接的に相互作用することが示唆された。mes1のサプレッサーとして得られた変異はすべて劣性であり、少なくとも11の相補群(sms1-sms11)に分類されることがわかった。sms遺伝子の単離を試みたところ、タイプ1プロテインフォスファターゼをコードするdis2遺伝子が得られた。dis2遺伝子はmitosis制御に関与すると考えられている。dis2遺伝子は複数のsms変異を相補することができたが、dis2がsmsのいずれかとアレリックであるか否かは現在解析中である。これらの結果より、mes1は細胞周期のG2/M期と同様な生化学的反応を活性化することにより減数第二分裂を制御していることが示唆された。
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