研究概要 |
心筋細胞α_1受容体,アンジオテンシン(AT)およびエンドセリン(ET)受容体はともに三量体GTP結合蛋白質(G蛋白質)のG_qを介してPI代謝促進に共役されている。したがってこれら受容体は共通の情報伝達過程を介して心筋細胞機能調節を行う可能性が高い。これらの受容体刺激による種々のレベルにおける調節過程の異同から調節系におけるG_qタンパクの意義を追求することが本研究の目的である。α_1受容体刺激の心筋細胞機能調節における特徴は (1) Negative lusitripic effect(弛緩遅延効果)にともなわれた陽性変力作用,(2) 軽度の細胞内Caトランジェント増強作用,(3) 収縮蛋白Ca感受性増強作用,(4) 哺乳類間における著しい種差などである。 本年度の研究ではCa感受性蛍光色素indo-1/AMを負荷したウサギ単離心筋細胞をもちいて細胞短縮とindo-1蛍光シグナル(CaT)の同時測定が可能な実験系でこれら受容体刺激効果を比較検討した。α_1刺激はβ刺激とは対照的にほとんどCaT増強をともなわずに細胞短縮を増強した(収縮力増強効果)。α_1刺激効果はエクオリン負荷ウサギ乳頭筋標本において得られた結果と非常によい整合性を示した。ウサギ心室筋細胞におけるET受容体刺激のCaTに対する効果は検索されていなかったが,本研究においてET-1による収縮性調節はα_1刺激効果と非常に高い類似性を示すことが明らかにされた。すなわちET-1の陽性変力作用も(2)および(3)にともなわれて惹起された。一方,従来の研究においてATは(2)を示さず,(3)のみの効果により陽性変力作用を惹起することが報告されていたが,本研究においてATも同様に(2)および(3)の機序により収縮性増強作用を発揮することが明確に示された。したがってこれらPI代謝促進に共役されている受容体刺激による収縮性調節は共通の情報伝達過程を介して発揮され,収縮性調節におけるPI代謝促進の生理的意義を強く示唆する。
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