研究概要 |
自己の抗原に対する寛容の成立は、主に胸腺において自己のMHC-自己ペプチド複合体をT細胞が認識して、ネガティブセレクションがおこることによると考えられている。この免疫寛容の成立に最も大きな影響を与えるHLAクラスI分子に結合するペプチドの解析は、きわめて限られていた。昨年、多数のHLAクラスI分子に結合する自己抗原ペプチドを分離・生成し、そのシークエンスのモチーフを決定したが、この方法では、ペプチドをHLAクラスI分子との結合を詳細に検討することができない。そこで、多数の合成ペプチドとHLAクラスI分子の結合を直接調べる系(HLA class I stabilization assay)を開発した。これを用いてHLA-B^*3501分子とモチーフ(2番目がProおよびAla、C末端が疎水性アミノ酸)をもった320種類の9-merから11-merまでのペプチドの結合を調べた。53.1%のペプチドが結合し、ペプチドの長さがながくなっても結合力の低下は見られなかった。C末端のアミノ酸がTyrおよびPheであるペプチドの方がIle,Leu,Metであるペプチドより強く結合した。このことから、HLA-B^*3501分子のFポケットは深くなっていると考えられた。同様にHLA-B^*3501分子と303種類のモチーフ(2番目がProおよびAla、C末端が疎水性アミノ酸)をもった8-merから11-merの合成ペプチドとの結合を調べたところ、16.5%のペプチドしか結合できず、また8-merおよび9-merのペプチドより10-merおよび11-merのペプチドの方が結合力が低下していた。HLA-B^*3501結合ペプチドとは逆にC末端がIle,Val,Leuであるペプチドのみが結合でき大きい分子であるTyr、PheをC末端にもったペプチドは結合できなかった。このことからHLA-B^*3501分子はFポケットが浅くなっていると考えられ、両側のB,Fポケットが浅いため長いペプチドは結合しにくいと考えられた。
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