研究概要 |
NODマウスは、自己免疫性糖尿病を自然発症するヒトI型糖尿病のモデルマウスである。我々はこれまで、NOD-scidマウスをレシピエントとして用いた移入実験から、NOD由来のCD4T細胞の移入或は複数の膵島反応性CD4T細胞クローンの同時移入によって糖尿病を誘導できるが、単一CD4T細胞クローンでは糖尿病を移入できないことを明らかにしてきた。この事実は、効率的な糖尿病の発症には膵島反応性CD4T細胞の抗原特異性或は機能の多様性が必要である可能性を示している。今年度の本研究では、これらCD4T細胞クローンの機能解析を行った。その結果、調べた5種のクローンのうち2クローンは、IFNγを生産するがIL-4,IL-5,IL-6,IL-10を産生せず、FAS依存性の細胞障害能を有する典型的なThl細胞であった。一方、3クローンはIFNγに加えIL-6とIL-10を産生する細胞であった。従って、膵島反応性CD4T細胞には少なくとも2種の機能的サブセットが存在すると思われる。最近、副刺激分子の一つCD40が体液性免疫だけでなく細胞性免疫の成立にも関与している可能性が考えられている。CD40欠損マウスを、NODにかけ合わせCD40欠損NODマウスを作成した。このCD40欠損NODマウスでは糖尿病は発症は認められなかった。一方、糖尿病を発症したNODマウスの脾細胞をX線照射したNODマウス或はCD40欠損NODマウスに移入したところ、何れのレシピエントマウスにおいても糖尿病の発症が認められた。この結果は、CD40-CD40L相互作用が標的臓器の破壊に直接係わるエフェクター相ではなく、むしろ自己反応性T細胞が出現する初期相において機能していることを示唆している。
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