研究概要 |
本研究の目的はマウスインターフェロン制御因子-2(Interferon Regulatory Factor-2,IRF-2)、大腸菌RNAポリメラーゼαサブユニットC末端ドメイン(CTD)などの幾つかの転写因子の溶液中での立体構造を決定し、その制御配列DNAの分子認識機構、他の転写因子との蛋白質-蛋白質相互作用を立体構造的に明らかにすることである。手法としては核磁気共鳴法(NMR)を用いる。 大腸菌RNAポリメラーゼαサブユニットCTDについては、溶液中の立体構造を決定することが出来た。その結果、αサブユニットCTDは短いループに繋がれた4本のヘリックスとN末端、C末端にある比較的長いループ構造からなる事が判った。αサブユニットCTDはUPエレメントと呼ばれるエンハンサー配列に結合すると共に、幾つかのトランスアクチベータ-と相互作用する。DNAとの結合部位を、DNAとの複合体のNMR測定をすることによって推定した。また、トランスアクチベータ-との相互作用も変異体の立体構造上へのマッピングにより推定することが出来た。 また遺伝研・上田均博士らとの共同研究として、昆虫の脱皮・変態に関わる転写因子FTZ-F1及び、そのメディエーターであるMBF1の立体構造解析、を開始した。MBF1のプロテアーゼによる限定分解によるFTZ-F1,TBP結合ドメインのマッピングを終えており、MBF1の67-180の113残基からなるドメインがFTZ-F1、TBPと相互作用するのに必要な領域であることが明らかになった。またMBF1全体とMBF1(67-180)のNMR測定により、この113残基のドメイン部分は主として安定な立体構造を持つのに対し、N末端の70残基程度は溶液中でフレキシブルな構造を取ることが示唆された。
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