研究概要 |
胚発生の過程で、個々の細胞における遺伝子発現制御を液性因子によって仲介するシステムのひとつとして核内レセプターファミリーに注目し、機能構造の詳細な解析、新たなメンバーの同定、レセプター遺伝子の発現制御機構の理解から、制御遺伝子ネットワークの動態について知見を深めることを目的とした。 two hybrid systemを哺乳類培養細胞系に応用することにより、核内レセプター間にみられる特異的な蛋白質相互作用とリガンド結合の効果を解析する実験系を確立した。任意の核内レセプターをGAL4のDNA結合ドメイン、VP16の転写活性化ドメインに融合させ、これらを同時に細胞内で発現させてGAL4レポーターの転写活性化を検討することによって、核内でRXRがRXR,TR,VDR,PPARとそれぞれリガンドの非存在時にも安定なヘテロ2量体を形成していること、新たにNGFI-B、LXRと呼ばれる核内レセプターがRXRのパートナーとなりうることを示した。また、RXRがレチノイン酸レセプターとしても機能することから、リガンド添加によるレセプター各サブユニットの転写抑制・誘導能獲得の機構、および新たに見いだされたコリプレッサーSMRTとの相互作用機序についても検討した。 初期胚における核内レセプター群の発現や転写制御能を修飾するシグナル因子を検討する目的で、中胚葉・神経誘導におけるアクチビンのシグナル伝達経路を受容体遺伝子の発現パターンから解析した。また、蛍光蛋白質GFPを用いた核内レセプターのin vivoラベル法を新たに開発した。 前脳に特異的に発現する新たな核内レセプターTlx遺伝子座をマウスから単離し、構造解析を進めた。この遺伝子は染色体6(ヒトでは10)に存在し、少なくとも20kbの範囲に及び、コーディング領域は9つのエクソンに分断されている。プロモーターと予想される領域の塩基配列決定、およびこれに基づく転写開始点の決定が進行中である。また酵母two hybrid systemにより、Tlxに結合する胚性因子の探索を継続中である。
|