研究概要 |
葉の発生の制御機構を理解することは、植物の形の理解に必須である(Tsukaya,1995a,b)。しかし双子葉植物では葉の発生が複雑で、解剖学的解析が困難であった。本研究はそこで、アラビドプシスを材料に、葉の発生過程の研究に、細胞レベルでの発生遺伝学を導入することで解析を進めてきた(Tsukaya,1995a)。 今年度の成果として、まずangustifolia(an)変異体とrotundifolia(rot)変異体との解析から、アラビドプシスの葉形が、細胞の極性伸長を通じて、縦と横との二方向独立に制御されていることを、初めて明らかにした(Tsuge et al.in press)。次に本解析から、細胞の極性伸長制御機構が示唆されたので、an変異をやや抑圧する劣性突然変異、macrophyllaの解析を行った。その結果、本変異により葉の横方向への伸長が促進されることが判明した(Tsukaya et al.,1995)。これは先の仮説を支持する結果である。さらに微小管の配向の解析から、AN遺伝子が葉の細胞表層微小管の配向制御に関与していることが、強く示唆される結果を得た(Tsuge,Ph.D.thesis)。 このほか、細胞の伸長と分裂を共に制御するLAN1遺伝子、葉の全形を司るAS遺伝等の解析も進めた。 一方アラビドプシスの子葉の特性(Tsukaya et al.1994)を活かすべく、子葉の変異体のスクリーニングを行ない、得られた変異体について、現在遺伝子学的解析を進めている。 以上の成果は、双子葉植物の葉形態形成の発生遺伝学的解析として初のものである。本研究のさらなる進展のため、T-DNAタッギングラインからのスクリーニングを、なお続行中である。
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