研究概要 |
本年度は、現在までに種々の行動異常を報告しているFyn欠損マウスについては、新たに聴覚性痙攣発作の異常(Mol.Brain Res.,1995)、学習行動過程での情動異常(Mol.Brain Res.,in press)を確認し報告した。また、Fyn特異的モノノクローナル抗体の作成に成功した。また、神経経路形成過程でのFynの分子機構を解析する目的でFyn結合分子の単離を行った。その結果、シナプス肥厚に濃縮するp130を同定した。興味深いことにこのp130はモリス水迷路による空間学習障害、聴覚性痙攣発作、情動行動異常が認められるDBA/2系統のマウスで分子量が異なっていた。 また、マウス生誕直後の脳のcDNAライブラリーを用いて、酵母中のタンパク質相互作用検出系Fyn結合分子の同定を行った結果、数種の新規分子が同定され、ノ-サンブロッティング法による解析の結果、脳神経系に特異的に発現する分子が数種類存在することを確認した。その内TH34はin situハイブリダイゼーションの結果、Fynの発現が高く認められる嗅球の僧帽細胞層、海馬体の錐体細胞層、歯状回の顆粒細胞層、小脳のプルキンエ細胞層で強い発現が認められ、Fynとの関連性が示唆された。また、得られたクローン中に存在した分子の1つは、カドヘリンリピートの存在する新たなカドヘリンであった。興味深いことにこのカドヘリン様分子はファミリーを形成しており、現在までに9種類の遺伝子を確認した。得られた新規Fyn関連分子は神経経路形成過程で現在までに知られていない新たな分子機能を持つことが期待される。
|