研究概要 |
本年度は,平成5,6年度分の研究成果をもとりくみ,最終的なとりまとめを行った。まず第1に,地球本位型社会形成への法的・政策的支援手法の考え方について,国家間の環境政策の実現手段としての「誘導手法」を総合的に検討し,概念的整理を行った。その手法には,条約のみならずソフトロー(宣言や決議など),その他,資金・技術支援,情報提供,多国間の環境保全コストの移転などがあるが,本研究では,地球環境問題の類型別に誘導主体(国際機関,国家,地方自治体,NGOなど)が利用できる誘導手法をまとめ,整理した。第2に,南北間の誘導手法として特に重要な援助をとりあげ,多国間援助(世界銀行,アジア開発銀行)と二国間援助(日本のODA)について検討を行った。その結果,援助に際して環境配慮システム(環境行動計画,環境アセスメントなど)を援助機関のみならず被援助国の社会システムの中に内部化する必要性が指摘された。第3に,誘導主体として最近特にその重要性が注目されているNGOについて検討を行った。NGOは大衆の認識を向上させるとともに,国家,企業,個人などに積極的な行動を求め,その実施を監視する。NGOは,地球環境関連の条約体制を実体面のみならず法制度の両面においてバックアップし,条約の効果的な実施を促進していることが指摘された。第4に,以上の誘導手法の基礎になっている理念,つまり地域間公平(世代的公平)と世代間公平について検討を行い,地球環境関連の条約がそのような理念を法制度の中に具体的にとり入れていることを実証的に明らかにしたしたとえば,差別的義務,選択的インセンティブ,環境アセスメント,国際基金など)。
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