研究概要 |
二酸化炭素を唯一の炭素源として増殖するホモ酢酸生成菌とメタン生成菌を陰極となる電極表面に固定(固定化微生物電極)して通電し,水の電解で生成する水素を電子供与体として利用しながら,酢酸またはメタンに還元変換するバイオエレクトロ法による,これなでにない新たな二酸化炭素の有用物質への変換プロセスの処理特性と操作に関わる影響因子を明らかにするとともに,本法の適用可能性を検討した. 固定化微生物電極は,排水処理の嫌気性消化汚泥を種汚泥として混合培養を行い,電極材料を浸漬して固定化した後,馴養して作製した.さらに,連続または回分反応装置に陽極とともに設置して実験に供した. 連続処理において,生成するガス成分の約80%がメタンでその速度も安定しており,水素はほとんど検出されずに,電解で生成した水素は効率よくメタン生成に利用されることがわかった.一方,液相では,酢酸は検出されず,本系のような混合培養系では,ホモ酢酸生成菌の代謝により生成する酢酸が,直ちに,メタン生成菌によるメタン生成に利用されるため,見かけ上,酢酸が検出されなかったと考えられた.しかし,別途に行った回分実験では,メタン生成活性阻害剤を系内に添加すると,メタン生成量の減少とともに酢酸が生成・蓄積し,ホモ酢酸生成菌が優先種となる環境を創り出すことで効率的な生産が可能であることが明らかになった.電流密度の増大に伴い,メタン生成速度は比例的に増大したが,高電流密度条件では,変換効率が低下し,最適電流密度の存在が示唆された.本反応系の水素利用率は,最大で約80%程度であったが,これは電解による水素生成の電流効率に負うところが大きく,生成水素は,ほとんどすべて利用された.以上の実験は,3V程度の電圧で安定して進行することから,太陽電池を電解水素生成用の電源として利用することが可能であると推察された.
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