研究概要 |
福山型先天性筋ジストロフィー(FCMD)は,先天性筋ジストロフィーに,脳奇形を伴う常染色体性劣性遺伝疾患であり、日本に多く、悲惨な病気であるが、本態はほとんどわかっていない。申請者らは本症の遺伝子が第9番染色体長腕31-33領域に存在することを報告してきた。本研究では、本症の病態解明ならびに未知の脳機能分子の発見へむけて、第9番染色体長腕31のごく狭い領域に絞りこまれたFCMDの原因遺伝子を単離し、遺伝子産物を同定し、その機能を追求することを目的としている。当該年度は、 1.FCMD遺伝子領域内に存在する9q31のマーカー、mfd220との間に創始者効果を表す連鎖不平衡を見い出し、FCMD遺伝子をこのマーカーの近辺、約1Mb以内に追い込んでいたが、さらにこのマーカーmfd220を含むYACコンティグを作成した。 2.またFCMDは遺伝的孤立集団である日本人に特異的に頻度が高いことから、病気の創始者は一人と考え、フィンランドでのような連鎖不平衡マッピングを行った。YACコンティグより独自に単離したマーカーを用いて、アレルタイプするとともに、YAC上での位置を決定した。結果、FCMDはマーカーJ12を含んだ約100kb以下の領域に存在すると考えられ、FCMD遺伝子の単離に高度に焦点をしぼることが可能になっている。この領域に既知の蛋白質は存在せず、FCMD遺伝子産物は未知のものであると考えられる。 3.現在までに7家系の出生前診断を行い、全例正診である。その他10数例の遺伝子診断を行った。もちろん遺伝子診断のガイドラインを満たしている。また出生前診断における胎児剖検例の検討から、FCMDの脳奇形はglia limitans-基底膜複合体の亀裂が一因になっていることが明らかになった。
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