研究概要 |
AP1,AP3,PI,AGは特にMADS遺伝氏族とよばれる遺伝子ファミリーに属する遺伝子であり,これらの遺伝子はMADS boxと呼ばれる保存的なDNA結合領域を持ち転写制御因子として働いていると推定されている.花の起源をその形態進化の分子遺伝学的基礎を明らかにするためには多様な形態の花での比較研究が必要とされる.そこで本研究は,被子植物の花の進化を明らかにする目的で原始的被子植物といわれている植物群でののMADS遺伝子群の解析を行った.対象植物は多心皮類の代表としてキンポウゲ科,スイレン科を,単純な構造の無花被類の代表としてドクダミ科を用いた. 対象植物の花芽からRNAを抽出し,MADS boxのデジェネレートプライマーを用いたRT-PCR法でMADS遺伝子族の遺伝子を増幅.増幅産物からRACE法により遺伝子の全配列を決定した.その結果,これまでの所,各植物群でホモロジー検索の結果Cクラスの機能を持つシロイヌナズナのAG遺伝子の相同遺伝子と見られる遺伝子のクローニングに成功した.それぞれの遺伝子の塩基配列データに基づき,これまで報告されているMADS box遺伝子とともに系統樹を作成するとシロイヌナズナのAG,Brassica のBAG1,トウモロコシのZAG1などとクラスターを作り,今回クローニングされた遺伝子はAGの相同遺伝子であることが示唆された.また,通常,AGの相同遺伝子にはMADS boxの前に50個ほどのアミノ酸が存在するが,ドクダミのAG相同遺伝子(HAG1)にはこの配列が欠如している.分子系統樹でAG相同遺伝子の姉妹群に当たるAGL7,11など胚珠で発現している遺伝群や,裸子植物のAG相同遺伝子にも先頭の配列が欠如しているので,AGの先頭配列は被子植物の進化の途中で獲得された可能性が高い.
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