研究概要 |
脊椎動物アルドラーゼには組織特異的に機能する3種類のアイソザイムA型(筋型),B型(肝型),C型(脳型)がある。これらのアイソザイムは機能する組織の糖代謝ならびにエネルギー代謝上の必要性から2つの基質fructose-1,6-bisphosphate (FB)とfructose-l-phosphate (FlP)に対する動力学的挙動が著しく異なっている。 われわれはアルドラーゼ分子上に各アイソザイム固有の配列(IGS)が4カ所存在すること、A型-B型間のキメラ酵素の機能解析の結果からA型の特性を表すためにはIGS-1と4が不可欠であることをすでに報告しているが、本研究ではB型-C型間、A型-C型のキメラ酵素を用いて機能解析を行なった。その結果、A型と同様、B型とC型も主にIGS-1と4がアイソザイム固有の特性を担っていることが明らかになった。 キイロショウジョウバエのアルドラーゼは単一遺伝子からカルボキシル末端領域の31個のアミノ酸配列に対応する3つのエキソンを選択的に使い分けることによって、3種類のアイソザイム(アルドラーゼα,β,γ)をつくりだしている。われわれは大腸菌発現系を使ってこの3つのアイソザイムをつくり、各アイソザイムの動力学的性質を解析した。その結果、この3つの酵素は二つの基質に対する特異性、二つの基質に対する活性比、基質との親和性、組織分布等に関して相互に異なっていることが確かめられた。これらの性質の差は選択的スプライシングによって使い分けられた領域の配列の差に起因するが、この領域は脊椎動物アルドラーゼのIGS-4に対応する。このことは脊椎動物以前の生物においても脊椎動物のIGSに対応する配列が酵素の特異性の決定に関わっていることを示しており、アイソザイムの機能獲得にこれらの配列が関わっていることを実験的に証明することができた。
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