研究概要 |
Basic-helix-loop-helix(bHLH)領域をもつMyoDファミリー蛋白質は,骨格筋細胞の分化を誘導するmaster regulatorとして機能している.心筋細胞にも分化を誘導する蛋白質因子の存在が想定され,それはMyoDファミリーと同様にIdやE蛋白質(E12,E47,など)をダイマーを形成するbHLH蛋白質であると考えられる。そこで心筋細胞分化誘導因子を同定することを目的として,マウス新生児と親の心筋cDNAから3´RACE-PCR法により,心筋細胞特異的bHLH蛋白質のクローニングを試みている.現在までに,約60個のPCR産物について検討したが,そのうちの3個は心筋細胞特異的発現を示した.これらは新規の蛋白質をコードしており,さらにコード領域全長を含むcDNAsをクローニングすることにより,bHLHモチーフをもっているかどうかを調べている. 心筋細胞や骨格筋細胞では成熟にともない,筋収縮を担う筋原線維が発達する.筋原線維形成の初期の段階では,その構造は非筋細胞にみられるマイクロフィラメント束(ストレスファイバー)に類似している.非筋細胞のマイクロフィラメント束の形成は低分子量G蛋白質のRhoによりもたらされる.またその上流ではRacが機能している.そこで筋細胞にRho/Racファミリーの低分子量G蛋白質が存在すれば,それは筋原線維形成に関与している可能性が考えられる.この仮定に基づいて,骨格筋細胞株C2筋管細胞のcDNAライブラリーよりいくつかの低分子量G蛋白質cDNAsをクローニングした.そのうちの一つはRaclをコードしており、心筋を含むさまざまな組織に発現がみられた.またgMtleはRhoAと約53%の相同性をもつ新規の蛋白質をコードしており,波状膜と偽足突起に局在していた.これらの蛋白質の細胞内での機能について,現在検討中である.
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