研究概要 |
我々が線虫C. elegansから得た蛋白質CEGHは、そのN末端側とC末端側でras蛋白質とアクチンにそれぞれ結合する。DrosophilaのCEGHホモログ遺伝子の変異体では受精卵の細胞質分裂がおこらず、CEGHは細胞質分裂に必須と考えられる。平成7年度はCEGHについて以下の解析を行った。1,抗CEGH抗体による免疫染色により、CEGHは線虫受精卵の有糸分裂に際し細胞周期依存に中心体に局在する(分裂期には局在するが間期には局在しない)ことが明らかとなった。CEGH遺伝子の変異株を得るため、トランスポゾン挿入変異株のスクリーニング等を進めている。2,XenopusおよびマウスのCEGHホモログの部分cDNAをdegenerate primerを用いたPCRにより単離し、抗体を作製した。ヒトのCEGHホモログもcDNAの全長を得た。酵母のCEGHホモログは検索中であるが、殺虫CEGHを出芽酵母で過剰発現させると、出芽の異常は見られなかったものの、活性型ras遺伝子による形質(熱ショック感受性)が抑圧された。ras蛋白質との結合によるドミナントネガティブ作用と考えられる。3,CEGHのアクチン結合領域は、試験管内でのG-アクチン重合反応(pyrene標識法)においてキャッピング活性を示すことが明らかとなった。一方、F-アクチン鎖に対しては切断活性を示した。CEGHはCa^<2+>やイノシトール燐脂質の明らかな結合部位を持たないため、これらの活性はras蛋白質により制御されている可能性が高い。4,CEGHの中心体への局在機構の一つとして、中心体に局在するアクチン関連蛋白質セントラクチンとの結合が考えられる。そこで、2種のヒトセントラクチンcDNAをPCRにより単離し、抗体を作製した。また、CEGHとセントラクチンに異なるepitope tagをつけて培養細胞で発現させる系も用意した。来年度は免疫共沈やyeast two-hybrid法により結合の可能性について解析する予定である。
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