研究概要 |
インターフェロンα,β(IFN-α,β)は抗ウイルス作用をはじめとして様々な生理活性を示すサイトカインであり、生体防御において重要な役割を果たしていると考えられている。IFN-α,βは標的細胞表面の特異的レセプターに結合し、その細胞質部分に相互作用するチロシンキナーゼの活性化が起こる。その結果STAT1,STAT2と呼ばれる転写因子が燐酸化によって活性化され、さらにこれらとDNA結合サブユニットであるp48(ISGF3γ)との3量体(ISGF3)が形成される。細胞核内においてISGF3は一群の遺伝子プロモーターのISREに結合してそれらの活性化、さらには抗ウイルス作用をはじめとした生理活性の発現を引き起こす。我々はマウスISGF3γのcDNAクローニングを行い、その一次構造を明らかにしてきた。またマウスISGF3γのDNA結合ドメインとSTATと結合するドメインを明らかにした。特にDNA結合ドメインを欠き、STAT結合ドメインを有する変異分子は細胞内においてドミナントネガティブに作用し、IFN-α,βの作用を阻害することが明らかとなった。STATとの相互作用に必要な最小限のドメインを細胞内およびin vitroの再構成系で決定した(アミノ酸211-399)。今年度はHis tagを付加したこのドメインを大腸菌の発現系をもちいて生産することに成功し、Niキレートカラム、ゲルろ過カラムにより、単一標品にまで精製することができた。(収量約5mg/1培養)。この標品についてNMR解析(都臨床研 生理活性物質研究部門 稲垣冬彦博士のグループとの共同研究)の結果、構造をとっていると考えられた。現在この分子の安定同位体標識を行っている。
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