研究概要 |
造血前駆細胞に働くサイトカインとしてこれまでstem cell factor (SCF), IL-6が知られていたが、最近になってFlt3/Flk2受容体型チロシンキナーゼ(FR)のリガンドであるFlt3/Flk2-ligand (FL)も同様に造血前駆細胞の増殖を支持することが示された。我々はTecキナーゼがFL/FRを介する細胞増殖機構にも関与することを以下のように明らかにした。 FRを導入したマウスBaF/3細胞をIL-3またはFLで刺激後Tecを免疫沈降しそのリン酸化チロシンの有無を検討したところ、TecはFL及びIL-3刺激のどちらによってもリン酸化が誘導されることが示された。またTecはFL刺激にて活性化されるだけでなく、Tec homologyドメインを介してFRと細胞内で会合することも示された。次に生体内でのFL/FRsystemにおけるTecの機能を明らかにするための基礎実験として、マウス骨髄幼若単核球をFLを含む様々なサイトカイン存在下にて液体培養し、その後のCFU-mix形成能を検討した。その結果IL6+FLを添加した場合CFU-mix形成能が数百倍に増強することが示された。興味深いことにこの液体培養時にTecに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与することで、CFU-mix形成能の増強はブロックされた。したがってFL/FRを介する細胞内シグナルのなかでも、Tecは細胞増殖機構に関与すると考えられる。 以上よりTecは造血前駆細胞に働くサイトカイン群(SCF, IL-6, FL)による細胞増殖機構のcommon signal transducerであると考えられる。
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